【日本一浴衣の似合う町づくりを目指す】No.45「いろは」系谷 瞳様
公開日:2019年08月11日
カテゴリー:ニューズレター
日本の温泉100選のトップ10に有馬温泉と城崎温泉2つの温泉がランクインする兵庫県。 志賀直哉をはじめ多くの日本の文豪に愛された城崎温泉。
ここ最近は、海外からのインバウンド旅行客が急増し、5年で36倍にもなったこの温泉地の目抜き通りにあるのが今回取材した浴衣販売レンタルのお店「いろは」。
老舗の温泉旅館が立ち並ぶ中で去年オープンした理由、将来のビジョン、絆のエピソードを若女将である系谷さんにお話をうかがいました。 浴衣の着方をイラストと英語で説明した「手ぬぐいBOOK」を絆工房が印刷させていただいたご縁で今回の取材が実現しました。
■ 高校3年 海外から見た日本と自分
—笠原:「海外観光客はやはり多いですか?」 —系谷さん:「確実にそうですね。今日も午前中、アジアからの女性観光客が浴衣を利用され今お出かけになったところですよ。」
ちょうど取材の為お店に向かう途中ですれ違った浴衣姿の東南アジア女性二人組。
日焼けしたエキゾチックな雰囲気に、浴衣がよく似合っています。
普通、海外の人が日本の着物や浴衣を着るとコスプレになったり、バスローブのような感じになりがちですが、
『いろは』では、着付けのプロの着付けスタッフが常時。
へアーセット込みの嬉しいサービスをしておりあっという間に着崩れしないしっとりした大和撫子にスタイリング変身させてくれます。
瞳さんご自身も京都で着付けを学ばれ、体に馴染んだ美しい着物姿で接客しておられます。
—笠原:「はじめにこの城崎温泉でお店を立ち上げた経緯を教えていただけませんか?」 —系谷さん:「17歳の時に、母の着物の着付けの先生からギリシャ・アテネで行われる10日間の着物ショーに参加してみないかという
お話しをいただきました。現地の人たちから矢継ぎ早に
「日本では着物は毎日着ているの?」
「あなた舞妓さん?」と質問されたのですが、そこですぐには答えられない自分がいたんです。
ちょうど進路で大学に行くかどうか迷っていたんですが、大学で特にこれを学びたい!というものもなかったので、
そういう状態で進学して果たして何かを見つけることが出来るのかな、と思ったんですね。
ちょうど進路を決める時期に海外の着物ショーに参加したことでもっと日本文化や着物のことを学びたいという思いが強くなりました。
まずは、京都で2週間ほど着付けを学び、高校卒業後に母のお店「きものサロンけいたに」で働きはじめました。」 同級生の多くが進学する中、その流れに飲み込まれることなく、「自分の人生を自分で決めて」着物の世界に進んだ系谷さん。
お母様のもとで働いていく中で、自分の経験を活かしたお店を展開したいと思い始めました。
それは、日本人だけでなく海外の方々も気軽に楽しめる和装専門サービスをと考え、
城崎温泉に去年の2月にゆかたの販売レンタルのお店ゆかた専門店「いろは」をオープン。
現在に至るまで約3500人のお客様がいろはの浴衣で情緒豊かな城崎での散策を楽しまれたとのことです。
取材の日は、秋の日差しが暖かく感じられる11月末。
既に二人組の若い女性が店内で好きな柄の浴衣を選んで着付けの真っ最中。
普段着でお店を訪れて、ヘアセットも着付けも店内で全てコーディネートできる「いろは」。
―系谷さん:「お友達同志やカップルのお客様が多いですね。
インスタ映えする浴衣と町並みを楽しみ思い出を作りたいから、というリピーターの方もいらっしゃったりと、嬉しい出会いが沢山あります。
城崎温泉に訪れる方の笑顔を沢山残したいと思っています。それはきっと、浴衣が繋ぐ絆作りのツールになっていると思います。」
■Sightseeing (観る観光)からSightdoing (体験型観光)へ
—笠原:「これからは、城崎温泉に来て温泉に入って観光した、というだけではなく、
【体験型の観光】が主流になってきますね。自分が観光地で何がしたいのか、
単に、観光して、美味しいものを食べて、温泉に入って楽しかったという従来の観光ではなく、
好きな柄の浴衣を選んで、それを着て町を観光したという【体験】が大事だと思います。
見る(see)ではなく、行動(do)する観光。自分が主人公になるストーリーのある観光です。
ところで、「いろは」というお店の名前の由来を教えて下さい。」
—系谷さん:「物事の基本や基礎を意味する“いろは”から来ています。
お客様には浴衣を通して和装のいろはを知るきっかけを作っていただければとデザインしました。
お店のロゴマークの丸、三角、六角形は着物の和柄でよく使われています。
店の名前もロゴマークも、シンプルでないと伝わらないと思い、漢字ではなく平仮名にしました。」
—笠原:「わかりやすくて、日本的でとてもいいですね。最後にこれからのビジョンがあれば教えて下さい。」
—系谷さん:「日々の生活にもっと和装を浸透させていきたいと思っています。」
週に何回かお手伝いに来られる瞳さんのお母様。 「仕事が忙しく子育てはおばあちゃんに任せていましたので、
娘とゆっくり時間を過ごしたのは高校生の時に連れていった着物ショーが実は初めてでした。」
それまではなかなか親子の時間がとれなかったのが同じイベントに参加し時間を共有することで今までの時を埋めるように急速に親子の絆を深めていかれた系谷親子。 「一卵性双生児よね。」とお互いに微笑む二人。 日本の文豪たちに愛された城崎温泉が、海外の現代の文豪達に愛される日がもうすぐ来ています。 浴衣レンタルのお店 『いろは』 (10:30~18:00 20:00~22:00 定休日 木曜日) 〒668-6101 兵庫県豊岡市湯島449 TEL / FAX:0796-32-0168