【絆のカタチ】No. 58アグリガーデン北村元気様
マスクをしていても感じるさわやかな風が通り過ぎる初夏の神鍋高原。
隠れ家的高原カフェ、Cafe&kitchen アグリガーデンにお邪魔しました。
店先には可愛い小花が風に揺れています。
西日本屈指のスキーリゾート、神鍋高原。
水質は、最高ランクの「水質AA」、2010年には世界ジオパークに認定ジオパークにも認定された、まさに『大地の遺産』の神鍋高原ですが、その中腹部にあるのがCafe&Kitchen、『アグリガーデン』。
隠れ家的なカフェで地元主婦や若い女性に大人気のお店。
今回は、そこのオーナーである北村元気(40才)さんにお話を伺いました。
—笠原 「以前はどんな仕事をされていましたか?」
—北村さん「高校卒業後、趣味でやっていたパラグライダーの技を磨く為に、アメリカのサンフランシスコ、ニュージーランドに渡りました。帰国後は、和歌山でインストラクターとして働きました。
そこで会社の社長さんから、インストラクターとして働くのもいいが、
一度社会に出て勉強したらどうだ、と言われ2年間大阪でサラリーマンを経験しました。
あまり性に合いませんでしたが、とにかく2年間は社長との約束を果たすという目的で働いていました。」
—笠原「その後で、こちらにUターンされたのですか?」
—北村さん「しばらくは冬の間は、北海道でスノーボードのインストラクター、
夏は富士山の登山ガイド、春と秋は長野県の厨房と、1年を通して様々なところで働いていました。」
—笠原「アクティブですね!」
パラグライダー、スノーボード、登山ガイドとまさに自然豊かな神鍋で育ち、そこで身につけたスポーツスキルを生かした仕事をしていた北村さん。そして、26才の時に結婚。
—笠原 「奥様とはどうやって出会ったのですか?」
—北村さん 「北海道にいた時に、彼女もスキーのインストラクターをしておりそこで知り合いました。
結婚と同時にこちらにUターンしました。」
お父様のペンション経営の手伝いをしながら、パラグライダーの事務所を設立。
その後、その事務所を使ってカフェをオープン。
長野軽井沢のペンション厨房で働いたことを生かして、お父様の経営するペンション『ペンシオーネキタムラ』で1年間ランチを提供。
そこで提供したランチの評判が良く、その味はアグリガーデンにもしっかりと継承。
■モノ消費からコト消費、さらにトキ消費時代へ突入
豊かな自然環境に囲まれた神鍋高原は、初心者からプロまで楽しめるスキー場があるという珍しいスキー場。また、昼夜の寒冷温度差が大きい高原の気候をいかした「神鍋高原キャベツ」も名物野菜。
―笠原「昔と今の神鍋高原はどうですか。」
—北村さん 「スキーと農業以外にもできることが沢山あると、色々と勉強会も開いていますが、課題も多いですね。
出来ないことを出来るように持っていく過程が難しいです。」
―笠原「人はつい出来ない理由を探してしまいますからね。」
—北村さん「そうですね。企画立案はあるのですが、それを団体でいくか、個人でいくか、意見をまとめるのが難しい時がありますね。」
―笠原「昔の成功体験をひきづっていると、なかなか前進できない時ってありますものね。
1つの行事を今年もするという理由が、去年もやったから、とか。」
—北村さん 「そうですね、簡単に後退したり、諦めてみたり・・。」
—笠原 「勿体ないですね。」
—北村さん 「地域柄、企画の進め方が独特だと感じます。」
—笠原 「世の中は資本をもとにして仕組みでまわっています。昔は売り手側と買い手側がはっきりと分かれていましたが、
価値の捉え方が変わってきている今は、売り手側と買い手側が混在してきています。そこを敏感にならないと取り残されます。」
—北村さん 「まさにそれは私も実感しています。
例えば、昔は、美味しいものを食べて泊まることに価値を見出してお金を払っていました。昔の神鍋高原もそこに存在価値がありました。でも、今はそうじゃなことがよく分かります。
例えば、身近な例を上げると、薪割りをしているとお客さまが「やってみたい、やらしてほしい」って言われるんです。
昔なら考えられなかったことですし、僕からしてみたら薪割りなんてしんどくて疲れるだけの作業です。
でも都会から来た人にとっては「薪割り」が非常に新鮮に映るようです。」
—笠原「体験価値に人々はお金を払うようになってきていますね。体験型の宿泊が人気がありますね。」
神鍋高原でも、今しか味わうことのできない薪割りという瞬間を体験する『トキ消費』時代がきています。
■人生はかけ算
—北村さん 「体験型サービスといえば、きのこ狩りをしています。自分で採った天然きのこをその場で食すサービスが非常に好評です。私達がきのこを栽培して、採ってパックいれて売って終わりという販売ビジネスでなく、お客様自身が採ったきのこやまいたけををこの自然の中で食べるサービスが、毎年予約完売です。」
―笠原「モノをつくるよりもお客をつくれと言われます。
一人のお客様が今年のきのこ狩りに満足したら、翌年も訪れ、そして今度は仲間を連れてきてくれます。
また、単に【きのこ】といっても、神鍋の自然が育んだ天然きのこというのはなかなか手に入らないということで、希少価値も生まれます。」
―笠原「きのこを軸にしてなにか新しいことが展開できそうですね。」
―北村さん「僕にとっては、きのこビジネスが、今、一番楽しいです。」
―笠原「仕事を通して人との絆を感じられるエピソードがあれば聞かせてもらえますか。」
―北村さん「人に助けられてここまで来た、という感じがします。
自分でやった感は、いつ来るのだろう、もしかしてきっと死ぬまで来ないんじゃないかと思います。
ペンションのお客さまも8割がリピーターさん。『美味しいお酒を持ってきたら一緒に飲もう!』と来られます。
実は、妻が数年前に大病しまして、その時もお客様から病気に治す様々な情報をもらったんです。
妻の病気をきっかけに家族が一致団結しましたし、家に閉じこもるのではなく、むしろ行動が増えました。
子供の学校行事にも積極的に参加し、役を頼まれると、経験出来ないことをやらせてもらうという気持ちで引き受けるようにしています。引き受けると、学ぶことが多く喜びがあります。」
—笠原「役を受けて、失敗したところで命までとられないですからね。
僕は若い頃色々と発言をしていると『やったことがない者がつべこべ言うな』と長老たちに言われたんです。そこで一念発起して役を受けたんです。開き直りです(笑)。」
―北村さん「僕が何よりすごい、と思ったのは子供達です。
今中学2年と小学3 年ですが、何かが出来てすごい、というのではなくて人生の目標をきちんと立てていることです。
そこが親としてすごいと思います。『私は東京の大学に行く!』『私はピアノを頑張る!』と目標を既に持っているところです。
また、そんな子ども達に伝えたいことは、「友達を作れ」ということ。僕は、今晩泊めてほしい、と言って二つ返事で泊めてくれる友達が今も日本全国にいます。縁が切れた友達はいません。だから子供にも友達を作るように言ってます。」
取材中に、神鍋高原を盛り上げようとする北村さんと同じ志を持つ仲間である神鍋高原道の駅駅長 上田直義さんにも遭遇。
上田さんも以前取材された人。
現在進行している企画をあれこれ楽しく話されていました。
—笠原「友は、財産です。人生の方程式というのは、能力×情熱×考え方(性格)と京セラの稲盛氏は言われています。
北村さんの周りに助けてくれる友達が沢山いるというのも北村さんの考え方に共感されているからです。
きのこという新しいビジネスへの情熱や行動力もすごい、インストラクターや料理人としての能力もある。
3つの要素のかけ算で人生は 変わっていきますね。これからもトライ精神で地元を盛り上げていって下さい。」
―北村さん 「有難うございます。」
Cafe&Kitchenアグリガーデン
〒669-5371兵庫県豊岡市日高町太田159-10
TEL 0796-45-0806
以上
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