
左は「光」で描く世界。
右は「インク」で作る世界。
似ているようで、実は住んでいる世界が違う。
最近、本当に増えた。
「ChatGPTで作りました。この画像をプリントできますか?」
「Midjourneyで作りました!」
「Adobe Fireflyです。」
そして最後にとどめの一言。
「この画像、そのままTシャツにしてください。(にっこり☺️)」
「来たな。」
AIが描いたデザインを見るたびに思う。
……すごい。
数年前ならデザイナーが数時間、いや数日かけて描いていたものを、
AIはコーヒーが冷める前に作ってしまう。
でも・・・・
印刷屋の絆工房としては、ここで一つだけ言いたい。
AIは「絵」を描くプロ。
プリント工場は「印刷」をするプロ。
この二人、仲はいいけれど、言葉が少し通じないということ。
AIは”完成図”を描く。
印刷会社は”設計図”を作る。
AI画像は完成品に見えるが、印刷する上で必要な情報は、
実はほとんど入っていない。
例えば、
透明に見える光。
金属のような質感。
蛍光色のような発色。
「いい感じに光って見える金色」
というインクは存在しない。
「画面では光る」
と
「布の上で光る」
は別世界。
「そのまま印刷してください」が一番難しい。
実は印刷屋が一番ドキッとする言葉。
「このままで。」
この四文字。
なぜなら、
その”まま”が存在しないから。
AIはRGBという光で色を作る。
プリントはCMYKや特色インクというインクで色を作る。
つまり、
リンゴとリンゴ飴くらい似ているけれど別物。
「そのまま」は、
実は誰も見たことがない。
AI画像が「そのまま印刷できない」理由。
主犯はRGBでもCMYKでもない。
最近よく聞かれる。
「画面ではすごく綺麗なのに、なんで印刷すると少し雰囲気が変わるんですか?」
答えは意外とシンプル。
画面とプリントは、色の作り方そのものが違う。
スマホやパソコンの画面の中では光っている。
だから、
ネオンのような鮮やかな青。
透明なガラス。
キラキラした金属。
一方、Tシャツは・・・・
光っていない。
そこにあるのは、
インクと布だけ。
インクは光を出さない。
布も光らない。
つまり、
画面で見えていた「光の演出」を、インクだけで表現しようとしている。
ここに限界がある。

その結果お客さんはこう言う。
「思っていた色と違うんですけど・・」
「なんだか色がくすんでいる」
AIは金色を描く。
でも実際には、
「金色の光」をインクで描いている。
印刷は金属ではない。
インクである。
だから、
画面ではピカッと見えていた金色も、
布の上では落ち着いた黄色や茶色に近い表現になることがある。
印刷機は決してサボっているわけではない。
物理的に光は出せないのである。
蛍光色も同じだ。
AIは、
サイバーパンクのような蛍光ピンクや、
目が痛くなるほど鮮やかなブルーを平気で描く。
インクだけで、
「目が光るような色」を再現することは難しい。
透明感もそうだ。
AIはガラスを描ける。
水滴も描ける。
オーロラも描ける。
しかし、
インクに「透明」という色はない。
あるのは、
紙や布の上に乗る色だけ。
つまり、
透明感は錯覚として表現するしかない。
さらに印刷屋だけが気付くことがある。
AI画像を200%、300%と拡大すると、
突然、世界が変わる。
髪の毛一本一本に見えていたものは、
ただのぼんやりした線だったりする。
小さく見れば美しい。
でも大きく印刷すると、
「あれ?」
となることは珍しくない。
AIは100点のイメージを作る。
私たちは100点のプリントを作る。
AI画像は夢を見せるのが得意。
印刷会社はその夢を現実にするのが仕事。
この二つの間には、
色補正。
線の修正。
解像度の確認。
データの作り直し。
プリント方法の選択。
生地との相性。
……という地味だけれど超重要な必須情報が盛りだくさん。
だから私たちは、
AI画像をそのまま印刷しない。
いや、
できない。
その代わり、
印刷したときに一番美しく見えるよう、
線を調整し、
色を補正し、
文字を作り直し、
細部を描き起こす。
AI画像を否定しているのではない。
AIが描いた夢を、現実の布の上で一番それらしく見せる仕事をしているだけなのだ。
なので、
「AIでつくったこのデザインをプリントして下さい」というお客様に対しては
だから私たちは、お客様にこうお伝えしている。
「AI画像の雰囲気を活かしたデザインに仕上げることはできます。でも、AI画像を100%そのまま布の上に再現することはできません。」
これは技術不足ではない。
光をインクに変える以上、
誰にも越えられない物理的法則がある。
「AIがあるから、もう印刷屋はいらない?。」
そんな時代は……
まだ来こない。
今のところ。
というより、
AIが進化するほど印刷会社の仕事は増える。
なぜなら、
AIは毎日何万枚もデザインを生み出す一方
その中で本当にTシャツになるのはほんの一部。
その最後のバトンを受け取るのが私たち。
最後に。
AIはものすごく優秀。
でも、
AIはまだTシャツを着たことがない。
洗濯をしたこともない。
生地の伸びも、手で触ってどれほど伸びるのかも知らない。
インクはどんなものであるか見たことがない。
だから最後は、
布と毎日向き合っている人間の出番です。
光で描いた世界を、インクだけで再現する。
それがプリントメーカーの、一番難しくて、一番面白い仕事。
💡 次回予告:RGB vs CMYKの仁義なき戦いに決着
「画面で見たあの『ネオンのように輝く美少女のオーラ』はどこへ!?」
心配無用。
「RGBとCMYKの超高すぎる壁」に終止符を打つ兵器は絆工房にはある。
その名は、
「絆工房オリジナル生地カラーチャート」
次回、この魔法の羅針盤がどのようにして「光(RGB)」を「インク(CMYK)」へと完璧に翻訳し、あなたのTシャツに命を吹き込む、そのメカニズムを徹底解説。