今はどのホームページを見ても、綺麗な写真がいっぱいの綺麗なサイトばかりです。それと比べたら逆行してますし、扱いにくいホームページになってます。
今どきのキラキラしたデザイン、ふわりとしたエフェクト効果をきかせて動きのあるホームページの真逆を行く、ちょっと扱いにくいデザイン。
なぜこの形にしたのか代表に取材した。
「ホームページを変えたのではない。会社の覚悟を見える形にした。」
2年前、絆工房は新しい一歩を踏み出した。
代表が代わり、新体制が始まった。
工場も変わった。
設備も変わった。
挑戦する事業も増えた。
少しずつ、でも確実に。
絆工房は新しい会社へと生まれ変わっていた。
ところが、一つだけ昔のまま残っているものがあった。
ホームページである。
会社は変わっているのに、ホームページは過去のまま。
言ってしまえば、「今の絆工房」を映しきれていなかった。
だからリニューアルしようということになった。
「そもそも、なんで作り直そうと思ったんですか?」
先代は想いの強い人だから、先代の言葉だけのホームページを作ったらいいのにな、と勝手に思っていたんです。今、機械も入れ替わったタイミングやったので、改めて、それじゃあ当社でやってみようかなと思ったんです。
設備も新しくなる。
ならホームページも変えよう。
シンプルだけど、実はすごく自然な流れ。
「前のホームページ、何が気になってたんですか?」
何かごちゃごちゃしてるなとは思っていて。
さらっと言う。
驚くほど、さらっと。
……いや社長。
制作者の中に私も入ってます。本人目の前にして言っちゃう?
(正確には、HP制作会社と先代と私)
「このデザイン、どこから来たんですか?」
有限会社玉木新雌さんへ工場見学に行った時ですね。想いが伝わる工場やなと思って。車にも文字が書いてあって、ええ雰囲気でした。 新しい事業の見学が、HPのデザインのヒントにもなりました。
目的は、今秋から始まるニット事業の視察行ったのだが、
記憶に残ったのは機械ではなく、その会社の空気だったという。
「想いが伝わる工場。」の世界観に衝撃。
デザインは真似できても、”想い”は真似できない。
「色がブレない、信頼がブレない。」
この言葉。
コピーライターが徹夜して考えた……
わけではない。
展示会だった。
お客様から自然に言われた、
「追加でも色が同じで安心。」
「色合わせバッチリですね。」
昇華プリントという仕事は、色との戦い。
いや、戦いというより約束だ。
今日作った青と、
一年後の青が同じであること。
簡単そうで、実はものすごく難しい。
湿度。
生地。
機械。
インク。
温度。
少し条件が変われば、色は簡単に逃げていく。
だから、
色がブレない。
それは偶然ではない。
技術だ。
そして技術は、
やがて信用になる。
だから、
色がブレない。
信頼がブレない。
たった十二文字。
でも、その裏側には二十年以上積み重ねた試行錯誤が隠れている。
良いコピーとは、言葉が上手いことではない。
積み重ねを潔く、短く翻訳すること。
そして、読んでいるとあることに気づかないだろうか。
「思う」がない。
「〜したいです。」
もない。
「〜でありたい。」
すらない。
全部、
「〜である。」
「〜だ。」
「〜する。」
と常体で言い切っている。
最初からこうだったわけではない。
むしろ最初は、「思う」があふれていた。
「色がブレないと思っています。」
「信頼を大切にしたいと思っています。」
「絆を作る会社でありたいと思っています。」
どこかで見たことのある、”優等生の会社案内”だった。
そこでClaudeとの壁打ちが始まる。
「本当に”思う”なのか。」
「言い切れない理由は何か。」
「二十年以上やってきたことなら、もう”思う”ではないのでは?」
何度も何度も、その問いが返ってきた。
まるで面接官。
いや、かなり圧の強い面接官だ。
そのやり取りを繰り返すうちに、一つずつ「思う」が消えていった。
そして最後に残ったのが、
「色がブレない、信頼がブレない。」
だった。
これはコピーライティングでも非常に重要な考え方。
例えば、
「色がブレないと思っています。」
「色がブレない会社でありたいと思っています。」
「色がブレない会社です。」
この3つは、意味はほぼ同じでも、読者が受ける印象はまったく違う。
最後だけが覚悟になる。
“思う”が消えると、不思議なことが起きる。
会社の覚悟が見えてくる。
「一番苦労したことは?」
「文字で勝負する」といった手前、小細工は通用しない。
だから、ファーストビューで動画、
スクロールするとアニメーション、
数字がふわっと現れ、
社員が笑顔で歩き、
最後にドローン映像。
マーケターとしては、
「よし、一通り揃っているわね。」と安心する構成。
しかし文字だけはごまかせない。
「何を書くか。」
一文字一文字が、その会社の人格になる。
そこで登場したのが、Ai。
鎌倉が使ったのはcalude。
なんども壁打ちしたという。
文字だけのデザインなので、何をどう書くかが大変でした。20年以上絆工房に勤めて、いろんな経験をさせてもらった。それをTOPページに集約するのが本当に大変で。AIと壁打ちしながら、何とか決めていった感じです。
もちろん、AIが全部書いたわけではない。
相談相手として使った。
ここにも今の時代らしさがある。
AIは魔法ではない。
優秀な編集者であり、壁打ち相手である。
最後に決めるのは、人間である経営者だ。
それはホームページも経営も、きっと同じ。
このホームページを見て、どんな人に届いてほしい?
絆工房は昇華プリントを主軸にやっている会社です。プリント屋さんはたくさんあると思いますが、このホームページに書いてあるような想いを持ってやっている会社です。この想いに興味を持っていただいて、お問い合わせいただけたら嬉しいです。
技術を売る会社は多い。
価格を売る会社も多い。
でも、
想いを売る会社は、それほど多くない。
しかも文字だけで。
最後に
制作会社さん、本当にすみません。
ここで少し裏話を。
実は今回、一番胃が痛かったのは私だった。
社長と制作会社の間に挟まれるWeb担当。
いわゆる”サンドイッチ状態”。
第一回打ち合わせ。
制作会社さんが、優しくこう聞いてくれた。
「どんなホームページをイメージされていますか?」
鎌倉が静かに言った。
「トップページは、文字だけでお願いします。」
……
ZOOM画面の向こうで制作会社さんの表情が固まっている。
もちろん制作会社さんはプロだ。
「文字だけです」
と言われても、
「分かりました。」
と答える。
その後ろには、
「正気ですか?」
という心の声が見えた気がする。
気のせいかもしれない。
たぶん。
Claude と壁打ちをしたファーストデザイン案を見せる鎌倉。
「もちろん、貴社からも文字だけで魅せる、読ませるデザイン案をご提示していただきたい」
数日後。
制作会社さんから最初のデザインが届いた。
見た瞬間、
私は思った。
「さすが。」
文字。
線。
余白。
縦書き。
横書き。
フォントサイズ。
それだけ。
制作会社さんからすれば、
縛りプレイにもほどがある。
料理人に
「塩だけでフレンチ作ってください。」
と言うくらい難しい。
それでも形にしてしまうあたり、
やはりプロはすごい。
文字だけという縛りの中で、
読み進めたくなる導線。
視線誘導。
余白。
CTA。
リンク配置。
スクロール率。
離脱率。
ユーザー行動を知り尽くした設計だった。
私はWeb担当として、
「これは最後まで読んでもらえる。」
そう素直に思った。
ところが。
鎌倉は静かに言った。
「(Claudeで作った)当社のレイアウトでお願いします。」
……
出た。
AIである。
ここ一年で、社内でもっとも発言力を持った新入社員。
しかも給料ゼロ。
休憩なし。
24時間勤務。
もはや役員である。
もちろん私は反論した。
「社長でも、最後にCTAは置きましょう。」
ホームページには基本がある。
読んでもらったあと、
問い合わせへ導く。
これは教科書にも載る設計。
ところが、だ。
「リンクは一つでいい。」
「いや、最後にも必要かと。」
「いらない。」
「でも……」
「そんなに言うなら、Claudeに聞いてみる。」
……
また出た。
AIである。
ちなみにAIの答えは、
「読了後の行動を促すため、ページ最下部にもCTAを配置することを推奨します。」
勝った。
私は社長のほうを見た。
社長もAIを見た。
数秒の沈黙。
そして鎌倉が一言。
「え〜〜〜〜〜!?いるぅ〜〜〜〜〜!?」
……
いるんや!!!!
ここまでくると、もはや議論ではない。
信念である。
Webマーケターとしては、「最後まで読んでくれた人ほど問い合わせ率が高い」というデータが頭をよぎる。
一方、鎌倉の頭の中にあるのは、
「このページは、一つの流れで読んでほしい。」
という、覚悟ある美学。
正しいか、間違っているかではない。
データと哲学の勝負である。
そして、この日は哲学が勝った。
そして最後の打ち合わせ。
事件は突然起きた。
お問い合わせフォームの確認中。
制作会社さんが当然のように付けてくれた
GoogleのreCAPTCHA。

迷惑メールを防ぐための世界標準の認証機能だ。
私は何も思わなかった。
普通だから。
すると鎌倉が言った。
「これ、青ですよね。」
……
嫌な予感がした。
「青、入ってますよね。」
来た。
「この青が気になる。」
制作会社さんも私も、
一瞬フリーズした。
いや社長。
そこですか。
世界中のWeb担当者が
「セキュリティ、大事。」
と言うところを、
絆工房代表は
「トップページはモノクロ・カラーが大事。」
と言ったのである。
結局、鎌倉のゴリ押しで
reCAPTCHAのバナーは使わず、
文字だけで代替できる方法を制作会社さんへお願いすることになった。
……
制作会社さん。
本当にありがとうございました。
そして本当にお疲れさまでした。
編集後記
今回、一番感じたことがある。
ブランドとは、
デザインではない。
細部への執念である。
「文字だけ。」
「リンクは一つ。」
「青はいらない。」
普通なら見過ごすような違和感を、
鎌倉は最後まで見逃さなかった。
Web担当としては毎日の夕方からの打ち合わせで何度も胃が痛くなった。
制作会社さんも、きっと同じだったと思う。
でも、その”面倒くさい”の積み重ねが、会社らしさになる。
マーケティングの世界では、「人は商品を買わない。物語を買う」と言われる。
絆工房が今回リニューアルしたのは、ホームページではない。
会社の覚悟の物語。
このホームページを作る数か月。
何度も思った。
”人の意見 聞いてるようで もう決めてる”
CTAも曲げない。
レイアウトも曲げない。
青色一つでも曲げない。
制作会社さんのプロとしての提案も、
Web担当が「いや、それは入れたほうが……」という訴えも、
最終的には、
「でも、このほうが絆工房らしい。」
の一言で着地。
何度「もう好きにしてください!」と言いかけたことか。
……もちろん、大人なので言わなかった。
心の中では、一日三回くらい言っていたけれど。
でも、そんな鎌倉を見ていると、不思議と一人の人物が頭に浮かぶ。
先代である。
先代もまた、なかなかの人だった。
一度「これだよ!」と決めたら、そう簡単には動かない。
周りが「いや、それは……」と言っても、
「そうか。」
と言いながら、結局そのまま進む。
「聞く耳はある。でも、聞き入れる耳は別。」
そんな絶妙な経営者だった。
そして会社を鎌倉へ託すとき、先代はこんな言葉を残した。
「カマチョのやりたいようにやったらええ。」
今なら、その意味が少しわかる。
「好き勝手やれ。」
という意味ではない。
経営者は、最後に決める人だ。
みんなの意見を聞く。
専門家の話も聞く。
AIにも聞く。
でも最後は、自分で責任を持って決める。
その覚悟がなければ、会社の舵は握れない。
船が嵐の中で進むとき、
船長が毎回乗組員に多数決を取っていたら、たぶん港に着く前に日が暮れる。
経営も同じだ。
ときには「頑固」と言われるくらいで、ちょうどいい。
いや、もしかすると経営者とは、
少し頑固なくらいが、適正値なのかもしれない。
もちろん、Web担当としては、
もう少しだけ人の話も聞いてくれたらと思う時がある。
それでも、あの日の先代の一言は、今の絆工房にちゃんと受け継がれている。
「カマチョのやりたいようにやったらええ。」
その言葉どおり、鎌倉は今日も、自分の信じた道を進んでいる。
……AIに「最後はCTAを置きましょう」と言われても、駄々こねていたくらいだから。
もう何も驚かない。いや、少しは驚くけれど。
「ごちゃごちゃ」には、血と汗と検索順位が詰まっていた。
「前のホームページって、ごちゃごちゃしてたんだ・・・」
と思った方がいたら、それは大きな誤解である。
私はWeb担当として、一つだけ声を大にして言いたい。
あのホームページは、戦場だった。
デザインの統一感はなかった。
(だってHP制作会社が複数それぞれの強みをそれぞれのカラーでいかしまくっていたから)
情報も多かった。
(何でもプリントできる会社だから、いろんなジャンルに手を出してたから)
でも、その一つひとつの施策には理由があった。
問い合わせが来ると、どんなキーワードを検索したかを尋ねた。(今でも)
そのキーワードによって
タイトルを変える。
ボタンの色を変える。
キャッチコピーを変える。
問い合わせフォームの位置を変える。
気づけば元に戻す。
また変える。
また戻す。
Googleのご機嫌を毎日とっているような仕事である。
勝ったと思ったら、
翌月にはGoogleがルールを変える。
「昨日までの正解」が、
今日には不正解になる。
PV数、コンバージョン率、直帰率、離脱率、CTRなど
真剣にやれば終わりがない。
そんな世界。
だから前のホームページは、
決して”ごちゃごちゃ”だったわけではない。
十年以上かけて積み重ねた、トライ・アンド・エラーの地層だった。
そこには、
「失敗」という名の肥料が何層にも積み重なっている。
そして、その積み重ねが実を結び始めた。
ここ数か月。
実は、ホームページをほとんど触っていない。
それでも問い合わせは入ってくる。
Web担当としては、一番うれしくて、一番暇な状態である。
「何もしなくても問い合わせが来る。」
巷のWeb担当者もきっとそこが業務ゴールかと思う。
……もちろん、本当に何もしていないわけではない。
何年も前にやったことが、ようやく実り始めただけだ。
SEOには、竹を育てるのと似たところがある。
毎日水をやっても、
しばらくは何も変わらない。
でもある日、一気に伸び始める。
検索順位も同じだ。
積み重ねは、ある日突然成果になる。
だから本当は、
このタイミングでホームページを変えたくなかった。
ええ、本音を言えば。
SEO担当なら、全員うなずいてくれると思う。
リニューアルとは、Googleに「はじめまして」と言うことである。
ホームページをリニューアルすると、多くの人はこう思う。
「新しくなったから、もっと見てもらえる。」
残念ながら、Googleはそんなに甘くない。
検索エンジンから見ると、
新しいホームページは、
「誰?」
である。
昨日まで十年以上付き合っていた相手が、
ある日突然、
髪型も名前も住所も変えて現れるようなものだ。
Googleも困る。
「えっと……同じ人?」
と確認作業が始まる。
その間、検索順位は大きく揺れる。
場合によっては、
昨日まで検索一ページ目にいた会社が、
突然、五ページ目へ旅に出る。
いや、五ページ目ならまだいい。
本当に見つからなくなることもある。
SEO業界では、
これを「一時的な評価のリセット」と呼ぶ。
私は別の言い方をしている。
「インターネット神隠し。」
昨日まで確かに存在していた会社が、
Googleの世界から、ふっと姿を消す。
ホラー映画なら完全に導入部分である。
だから、リニューアル後しばらくは覚悟している。
アクセス解析を開く。
数字を見る。
「2」
……
一人は鎌倉。
もう一人は私。
実に平和なアクセス数である。
Google Analyticsが、
「本日も訪問者がいました。」
と教えてくれる。
その二人、社内です。
しかも、お互いに
「ちゃんと表示されてる?」
と確認し合っているだけである。
世界中にホームページを公開しているのに、
閲覧者が社長とWeb担当だけ。
なんとも贅沢な貸し切り状態だ。
制作会社さんも、きっと心配になる。
「公開されていますか?」
はい。
公開されています。
誰にも見つかっていないだけです。
でも、不思議と焦ってはいない。
前のホームページも、最初はそうだった。
Googleは、派手さでは評価しない。
時間をかけて、
「この会社は信頼できるか。」
を見続ける。
だから今回も、またゼロから育てていく。
検索順位は、一日にしてならず。
そして、色も信頼も、一日にしてならず。
結局のところ、
ホームページも絆工房らしい。
派手に始まらない。
でも、気づけばちゃんと積み重なっている。
数か月後、「アクセス数2」が「問い合わせ2」になる日を信じて、今日も社長と私は、バトルしながらアクセス解析を更新している。
いかがでしたでしょうか?
2026/6/29 絆工房は覚悟の表明をHPでしました。
最後に社長の言葉をもってこの記事を締めさせていただきます。
絆工房は、社名にもある通り、手に取っていただいた皆様の絆を大切にしたいです。培ってきた技術、色に対する技術で、皆様の絆作りの役に立てれば幸いです。