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【人生で無駄なことはないんですよ】No.33美味しい豆腐のお店『蘇武の里』川田恵美子様

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絆工房と蘇武の里
蘇武岳から長い歳月を経て浄化された蘇武の縄文水という天然水を使ったお豆腐屋さん、『蘇武の里』。
親が決める人生のレールに猛反発し但馬を飛び出したオーナーが、なぜ再び但馬に戻りこの地でお店をオープンしたのか?
その理由と半生を伺います。

■ 自分の人生は自分で切り開いていく!

養父市八鹿の高柳で鞄屋さんを生業とした両親のもとで高校まで過ごした川田さん。

結婚する年頃になると
「生野より向こうには出さない。」、
「舅、姑のいる家に嫁がせる。」など川田さんにとっては理不尽な条件を突きつけてくる父親に猛反発。

「ここにいると自分の人生が歩めない。女性も経済力がなければ、どんな男性でも我慢して黙ってついていくだけの人生になる。」と、勘当同然に但馬を飛び出します。

「親に勘当された?いえいえ私の方が親を勘当したんですよ。」と朗らかに笑う川田さん。そして友達を頼って神戸に出ます。
「私は、結婚には縁がないと思っていましたから、家庭の事情で親と住めない、また親がいない子供達の世話をする児童施設で働こうと思っていましたが叶わず、結果的には神戸市職員(保育士)として働きました。」

 25歳で但馬屋食品の伊丹本社で働いていた同郷のご主人四郎さんと結婚。

ー笠原 「お父様の反対はなかったのですか?」
ー川田さん「私には双子の兄がいて、主人はしょっちゅう家に遊びにきていた幼馴染でしたからそれは反対はなかったです。」
 
結婚を機にご主人は会社を辞め、西宮甲子園近くの商店街でオリジナルのお豆腐屋として独立。

ー川田さん「商店街は皆で子育てするという感じの雰囲気で、私も育児ノイローゼにかかることもなく本当に楽しく娘達を育てることができました。その後、引越した伊丹中野西では手作りフードショプの店「にんじん」を開業。 

ー川田さん「いつかスイーツ、パン、サンドウィッチのお店を開きたいなと思っていたんです。商店街のお豆腐屋をたたんでから再び但馬屋食品に勤めた主人には反対されましたから私1人でお店の設計等を大工さんとかけあったりしましたよ。
ストレスで胃が痛くなる時もありました。周りからは「そんな住宅街の中にあるお店なんて売れるわけない。」とも言われたんですが、2人の娘がお店のチラシを作って近所に配ったり協力してくれました。
お客さんの「お惣菜も作ってほしい。」というリクエストに応えていくうちにお客さんも増えてきました。
一緒に働く仲間や近所のみなさんにも恵まれ13年間楽しく働きました。
もちろん苦労もありました。一番は、阪神淡路大震災で家が半壊、店もメチャメチャになり、その補修に時間も大金もかかり本当に大変でした。
でもお客さんに支えられなんとか再開が出来た時は嬉しかったですね。お客さんに「待ってたよ!」と言われた時は苦労も吹っ飛びました。」

■食の絆を次世代に伝えたい

絆工房と蘇武の里
−笠原 「都会でのご商売が順調だったにもかかわらず何故但馬に戻ってこられたのですか? 」
ー川田さん「昔からいつか田舎で、主人の手作り豆腐と私の料理とコラボできる店を起業したいという想いがあったんです。そして、ある日ラジオから聞こえた、「人間が新しい環境に馴染めるリミット年齢が55歳」という言葉に後押しされ、とにかく美味しい豆腐に欠かせない美味しい水のある田舎の土地を探し回りました。
岡山や園部、いろんな地方の田舎を探し回りましたよ。その中で業者に紹介してもらった神鍋のロケーションに惹かれて、ここに決めよう!と思いました。偶然、蘇武トンネル開通を機に蘇武の縄文水が湧き出した幸運にも恵まれました。」 
絆工房と蘇武の里

そして、見事ラジオの言葉通り55歳で日高町に移住。
56歳の2006年に『蘇武の里』をオープン。

ー川田さん「一生働きたいという私に対して、主人は定年を過ぎて働きたくないと言っていたんですが、都会での不規則な生活で体調を崩して歩くのも息切れしていた主人が早期退職してこちらに来てから健康になりました。
ご近所やお客さんにも恵まれ、ここ以外にはなかった、本当にここで良かったと思っています。大満足です。
オープンして今年で10年。「豆腐には旅をさせるな」、という言葉があるとおり豆腐は作りたてが一番美味しいんです。うちのこだわりは、その日作った豆腐しか売りません。うまみを逃してしまう加熱殺菌をしていない昔ながらの「生の」豆腐です。もちろん原料の大豆は、国産大豆100%。」

絆工房と蘇武の里
蘇武の里ミニ厚揚げ
–笠原 「日本は大豆消費量世界一なのに国産大豆生産量が少ない現状の中での大豆価格の高騰、消費税増率といった中で、それでも美味しいお豆腐にこだわる理由はなんですか?」

ー川田さん「これからの若い世代の人や子供達に本当に安全で美味しいものを食べて欲しいからです。
出来るだけ食べ物は生産者の顔が見えるものがベストだと思います。私は今日食べるものは明日の自分を作るだけでなく、未来の自分を作るものを最も重視し投資すべきものと思っています。」 

一生働くことを胸に都会でも田舎でもリスクを恐れない川田さんの生き方に、始めはリスクを背負う店舗開業に二の足を踏んでいたご主人も賛同、さらには娘さんご夫婦もお豆腐カフェ(豆Cafe)を開業するなど、4人5脚で次世代に本当に美味しいものを伝えようとされています。


スリムな体型から想像できない行動力と想いを実現するパワーのある川田さんですが、その物腰はお豆腐のようにふんわり。
 
「お金には恵まれなかったけど家族、周囲の人には恵まれました(笑)。そして今色んな経験が生きています。
「人生の中で無駄なことはないんですよ。」 

人生のヒントとなる言葉をたくさんいただいて、あっという間に取材終了の時間となりました。 

『蘇武の里』
〒669-5376 兵庫県豊岡市日高町万劫190−1 
tex/fax 0796-45-2692 


絆工房と蘇武の里
絆工房と蘇武の里
冬になると雪に埋もれるお店
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