視線のピントを瞬間に合わせてしまうようなエネルギーを蓄えた緑で覆われた神鍋高原。
神鍋高原道の駅の裏手にたたずむチャコールグレーの建物が今回取材する「ペンションてるてるぼーず」。
神鍋の空気と自然に惚れて大阪より移住したというオーナーの野村さん。
チェックシャツにジーンズ姿で太陽のような笑顔で現れた野村さん。大柄な体型に口ひげを生やしてまさに「森のくまさん」のような風貌。
「実家が無駄のないシンプルな家具屋だったので、ペンションの外観もシンプルにこだわりました」という野村さん。そのペンションの1階ロビーで話しをうかがいました。
■大自然神鍋への大いなる旅立ち
ー笠原:「まずは、どういったきっかけで大阪から移住されたかその経緯を教えて下さい。」
ー野村さん: 「兄から紹介されたペンション北村のオーナーと一緒にお酒を飲む機会があったのですが、初対面でいきなり説教されましてね。頭にきて喧嘩になりました。
「おっさん喧嘩売ってんのか!」と僕が言うと
「喧嘩なら神鍋で売れ!」と言われました(笑)。
そして、彼との出会いがきっかけで「ペンションくるみの木」の手伝いを紹介され、冬の毎週末に神鍋に来てました。手伝う代わりに食事付きでスキーが出来る、こんな楽しいことはなかったです。
冬以外は、大阪日本橋にある家業の家具屋を手伝う生活が5年間続きました。そしてちょうど親父が病気で倒れた時に、神鍋の土地を買わないかという話が出たんです。5年間でペンションのオーナーの生き方に魅力を感じ、同じ人生なら楽しく生きてみようと。28 年前の1988年、25歳の時からペンション経営をスタートしました。」
ー笠原:「奥さんとはどういうきっかけで知り合ったんですか?」
よく通る大きな声で話すオーナーとは対照的に物静かな奥様雅代さん。
笠原会長主催のおひねり勉強会メンバーのお一人。
ー奥様:「川西市出身で地元で歯科衛生士として働いていたんです。ボーとして何も考えずについてきたという感じですね。家族も反対はしませんでした。2人の息子も独立して、今は時間的に余裕もできておひねり勉強会にも参加しているんですが、久しぶりの勉強は楽しいですね。勉強すると今まで気づかなかったことがあるんですね。まだまだ出来ることもあるんです。また、出来るようになると楽しいですね。」
ー笠原:「モノの見方が変わるきっかけになるし、気づくこと、発見することが大切ですね。都会から移住してみて苦労とかありましたか?」
ー野村さん: 「苦労という苦労は感じたことはなかったですね。”郷に入っては郷に従え”です。
もちろん、最初の頃は、”隣保”という言葉すら知りませんでしたが、とにかくいろんなところに顔を出すようにしました。誰かに道で出会ったら必ず「こんにちは!いい天気ですね。」と挨拶しましたね。おかげさまで(都会から移住しても)苦労や違和感はそれほど感じませんでした。」
神鍋の自然と隣保にすぐに溶け込んだ野村さん。今は、沢山の役を引き受けておられます。
ー野村さん:「役を引き受けすぎちゃってます。(笑)でも値打ちつけて役をなかなか受けたがらないのはダメですね。役を引き受けるのも、やはり地域全体が活性化してほしいからです。うちだけ儲かっても仕方がないです。」
■てるてるぼーずの由来
ー笠原:「時代と共にお客様も変わってきましたか?」
ー野村さん:「昔は、予約される電話の向こうのお客さんとの声や、やり取りを通してどんなお客さんか分かりましたが、今は、ほとんどがネットから夜中に予約されるんですね。ですから、実際に来られるまでどんなお客様かわからないです。お客さんの数も減ってきています。求めるニーズがどこにあるのか、見極めが難しいですね。
ただ「焦らず、騒がず、一喜一憂せず」でいこうと思ってます。楽しんでやってます!」
ー笠原:「人口動態は確実に減ってきている中で便益、すなわち安さだけを追求する時代は終わりました。これからは、お客様の感性に響くもの、要は人生を豊かにできる特徴あるものを打ち出している会社のみが生き残るんじゃないでしょうか。それを実践している会社とそうでない会社の格差はますます広がっていくと思いますね。」
ー野村様: 「私も色々と考えています。夢は、この空間を出会いの場にしたいなと思っています。旅行者同士、見知らぬ人同士がつながりがもてるようにしたいですね。”勝手知ったる他人のペンション(^^)”として気軽に利用していただきたいです。普段着で来て自分の別荘のように泊まって下さい。」
最後に、てるてるぼーずのペンション名の由来をうかがいました。
「僕の頭を見ていただいたら分かるでしょ〜!。”見て忘れない、聞いて忘れない。”です。人に忘れられないでいることです。」
絆工房も、お客様に忘れられないでいてもらうためのツールとしてこのニューズレターを2ヶ月に1回のペースで発行しております。
緑の野に花の黄色いの庭を蓄えた神鍋高原。
その森林の中に静かに佇む
「ペンションてるてるぼーず」。
そこのオーナーは心も風貌もまさにまんまるいハートの方でした。
〒669-5371
兵庫県豊岡市日高町太田157−14
℡ 0796-45-1052
以上