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【あなたはよそ者、若者、馬鹿者になれるか】No.23トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー 林健太氏

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トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー 林健太

去る4月19日、豊岡カバンストリートに豊岡鞄のショップと鞄職人育成スクールでもある
「トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー」がオープンしたのをご存知でしょうか?

海外や京都のような街が碁盤の目の通りを縦横交差させストリート×アベニューと示すように、
カバンストリート内に垂直方面の「通り(アベニュー)」がアルチザン・アベニュー。

アルチザンとは“職人”という意味のフランス語。
アルチザン・アベニューとはまさに技を極めた鞄職人が通る道。

今回、このプロジェクトマネージャーである林健太さんに絆ストーリーを伺いました。

いつの世もイノベーションは「よそ者、若者、馬鹿者」から

林さんは、大阪生まれ。
建築設計を大学で学んだ後、大阪の街づくりや設計照明のコンサルタント会社に就職。
そこで数々の町の再生事業に従事。

同じ時期、豊岡では、全国一の鞄生産シェアを誇りつつも、近年海外生産に押され気味になっているのを改めて世界的な鞄産業へとブランド再生化しようという計画が持ち上がります。
そこで若干30歳の若さ、しかも、他府県の林さんに白羽の矢が当たります。

抜擢の理由は関係者曰く、
「よそ者、若者、馬鹿者だから。彼に賭けてみよう。」

林さんは、会社を辞めて豊岡に移住。

—笠原「永住されるのですか?」
ー林さん「分かりません、色々な展開が今後も必要になってくると思いますので。ただずっと関わっていきたいと思っています。」 

—笠原「会社を辞めてまでこのプロジェクトに携わろうとした動機は?」
ー林さん「物にあふれた都会と違って、豊岡と言えば鞄でしょ?それです。例えば、マグロと言えば大間、大間と言えばマグロ。同じ様に、いい鞄といえば豊岡、豊岡といえばいい鞄。僕は、豊岡鞄のブランドをそのように思ってもらえるようにお手伝いをしたいです。」


豊岡で作られているからこその豊岡鞄。林さんは、豊岡鞄を単なるファッションブランドとしてではなく、地域ブランドとして位置づけて戦略を展開しています。

■地域ブランド その強いネットワークと高い技術力

トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー 林健太

豊岡の鞄メーカー、職人さん達と一緒に仕事をしていく過程で、彼らの横の繋がりの強さと細部までこだわりぬく高い職人技術に驚かされた林さん。
地場産業の強みである地域の分業体制のすごさを目の当たりにしたそうです。

−林さん「普通、ライバル会社と何か一つのモノをつくり上げるのにこんなに熱くなるなんてありませんよ。豊岡鞄のすごいところはそこです。それに、職人のおじちゃんなんて、こちらが提案してないのに「ここは破れないように生地を貼っておいたよ。座席シートは汚れているから鞄が汚れたらあかん。だから外側に収納ベルトつけておいたよ。ワインも収納できるポケットもいるな。あ、ワインと言ったらフランスパンも入れるポケットも付けとかないとな!」と、長年蓄積している高い技術を一つの鞄にとことん注ぎ込んでいく腕はさすがです。」

高い技術力があるからこそ、豊岡鞄は一つ一つの鞄にメーカー名と永久保証書を付けることができます。
豊岡鞄、最大の特徴です。

—笠原「そんな世代の上の方達との仕事はどうですか?プレッシャーは感じますか?」
ー林さん「感じないようにしてます。(笑)意見の衝突、もちろんあります。でもそれを恐れてはいません。全てがエキサイティングです!」

■「技術の流出? いいじゃないですか!」

トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニューのもう一つの顔に一年で鞄のプロを育成するスクールがあります。
現在6人の次世代鞄職人の若者が現役職人からみっちりと指導を受けています。

—笠原「生徒さんは、豊岡出身の方がやはり多いですか?就職はやはりここ豊岡になりますか?」
−林さん「豊岡鞄の技術は世界レベルです。それを豊岡だけに留めておく必要はあるんですか?ないですね。どんどん外にその技術を発信していって欲しいです。そして、スクール卒業生が、いつか海外で活躍して「私の作ったこの鞄、実は豊岡鞄の技術のなせるものです。」と言わしめたら最高じゃないですか! 優れた技術を一ヶ所に留めておく必要なんて全くありません。」

高い技術を持っているのに、身近になり過ぎてそれに気づかず、外から見て再発見することがあります。
よそ者や若者にそれを気付かされる、
本当のバカ者は内なる者かも知れません。

■自転車鞄をもって但馬の風になる

トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー 林健太

トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニューの今年第一弾のテーマは、エコシティー豊岡にふさわしい「自転車の旅」。

照明を得意とする林さんとイタリアン人デザイナー共同のスタイリッシュな店内には、自転車のハンドルの形をしたクールな持ち手の鞄、サドルの形をしたファスナーの取っ手、ペットが顔を出すバック、もちろんワインやフランスパンが入るピクニックバックもあります。

これから訪れる方は、是非宝探しのようにワクワクしながら探してみて下さい。
レディースバックも充実。深みのあるツヤ感と柔らかい本革のバックはどれも十代の小娘にはまだ早い!といわんばかりに静かに佇んでいます。

トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー 

最後に、林さんに豊岡との絆を伺うと、
「面白いところ!」

どの質問にも予めこちらの質問を透視されていたかのように答えられる林さん。

メガネの奥からキラリと光る眼で、時にはこちらの予想を覆すような考え方をされる姿は、バカ者どころか智勇兼備の若者だったという、但馬にまた新しい風が一つ舞い込んできた、そんな印象を受けた取材でした。

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