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【小さなことをチャレンジすることもまた冒険である】No. 37『植村直己冒険館』館長 吉谷義奉様

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絆工房と植村直己冒険館吉谷館長

平成6年に設立された植村直己冒険館。
登頂前に現地の人達と触れ合い、同じ物を食べ、同じ生活をし完全に溶け込んでから登頂したと言われる植村氏。
デナリ(旧マッキンリー)に消えて32年経った今でも彼の業績や生き様を知ろうと訪れる人が多い冒険館。
その冒険館に平成8年に業務に携わり、15年に館長に就任した吉谷義奉館長。

人と人との心の絆を大切にした植村氏の心を通して、現代の私たちがどう人や仕事と繋がっていったほうがいいのか、銀杏が紅葉したおしゃれなテラスで話しを伺いました。

■失った大切な心を取り戻す

ー笠原「植村直己冒険館」の存在意義とはなんでしょう?

ー吉谷さん 「まずは、植村氏の冒険を正しく知ってもらうこと、2つ目は、こんな素晴らしい日本人がいたという彼の人となりを伝えること、そして3つ目は、物事にチャレンジする大切さを伝えることです。
世の中にはその人その人なりにチャレンジがある。例えば、冒険というと高い山に登った、長い距離を歩いたこと等が冒険と言われがちですが、そういうのではなく大病したけど自分なりにこういうチャレンジをした、例えば小さい山を登ってみた、これも一つの冒険です。
こういうその人なりのチャレンジを発信できる場が冒険館です。冒険館は、冒険者だけではなく、チャレンジャーも応援するところです。」

ー笠原ずばり植村氏のどんな人柄を伝えたいですか?
 
ー吉谷さん「生前の植村氏を知る人に取材やインタビューすると、皆さん、彼の業績よりも彼の温かく謙虚な人柄を必ず語られます。
彼は、世界初の五大陸最高峰登頂、北極点犬ぞり単独行など、ものすごい偉業を成し遂げましたが、必ず現地の人の生活に溶け込んでいました。常に周りの人を大切にし、何事にも一生懸命に現地の人達と接し、その生活から色んな事を学びながら強い心を育んだからこそ、高い業績を成し遂げられたと思います。
強い心とは?
例えば、人はよく最後まで諦めたらいけないって言いますね、誰も諦めようと思って諦める人はいないんです。
諦めざるをえない心になってしまうのです。それが心の強さの1つと思います。では、どうすれば、諦めなくなるのか、心を強くできるのか?
それには色んな方法があると思いますが、植村氏の行動を見ていると、「感謝の心」と「思いやりの心」、この2つを高めていくと強い心が育むように思います。
僕は今の日本人が忘れつつある絆、植村氏のそんな”心”を残していきたいと思っています。」

■A地点からB地点へ行く道すがらC地点を発見する

絆工房と植村直己冒険館吉谷館長

−吉谷さん「昔は、長いスタンツで仕事をしていました。例えばA地点から一生懸命やってB地点にたどり着く途中でC地点という別の地点を発見することがある。
「あ、自分がやりたいことはC地点なんじゃないか」と発見することがあったんです。一生懸命やるからこそ見えてくる世界がありました。」

−笠原「僕の座右の銘があって、「透明ガラスに当たるハエにはなるな」というものがあります。ガラスを通して透けて見える向こうの景色へハエは行こうとガラスと格闘する。その時に知恵のあるものが”(ガラスのない)脇にそれたらと向こうに行ける”とアドバイスします。
その時に、素直に聞くハエと頑固に聞けないハエがいる。素直にアドバイスを聞いて飛ぶ方向を変えてみると、新たに見えていない世界にたどり着くことができます。だから動かないとダメです。」

−吉谷さん「今の世の中はともすればソツのない仕事をします。確かにそれも大切なことですが、昔は“あの人優しいね。”、“あの人親切だね。”がはじめにあって、その上で“あの人賢いね。”という人柄が重視されてました。我々50代〜70代がそういう世の中にしてしまった責任でもあるのですが、この「やさしさ・親切・一生懸命」が大切にされる世の中に戻したいと思っているんです。今はそういう絆が失われているのが残念でなりません。感謝と思いやりの心があれば、大抵はうまくいくものです。」

–笠原「商売の本質は、つまるところ“親切”。」

絆工房と植村直己冒険館吉谷館長

−吉谷さん「それから、これからの企業や社会は、誰も想像つかない発想ができる人、そしてその実現に向けて行動に移せる人を求めていると思います。じゃあ、発想力はどうやったら作られるのか?それは、どれだけ経験、体験したかで決まってきます。ですから若い人は何でも体験することです。
植村氏は、「マイナス50℃を体験すれば、マイナス20℃は温かく感じる」と言われたそうですから(笑)。
厳しさの基準というのは、体験の深さによって大きくかわってくるんですね。そうなると、実践力の違いも生じてきます。実践力とは“やるか、やらないか”です。情報も知識も全くない白紙の状態から何かをやる人はいません。誰かの意見であったり、本からの情報、知識であったりして経験値に基づく発想が生まれるんです。この発想が多い人ほどいいモノが作れます。
今までしたことがないこと、それが冒険です。植村氏のような極地に挑むことも冒険と言いますが、小さなことでもチャレンジすることも冒険です。」

—笠原「人の成長というのは、昨日と同じようにやっているようでは成長にならない。昨日やらなかったことを今日やってみる、新しいことに挑戦することが成長です。」

植村氏の“心”を残したいという強い想いの吉谷館長。

ー笠原 「若い人たちへのメッセージをお願いします。」

絆工房と植村直己冒険館吉谷館長

ー吉谷さん「ここを、日本の冒険館にしたいなと思っています。チャレンジする人を応援しようとする場所。若者たちが、ここ(冒険館)に来れば、私たちの声を聞いてくれる、力になってくれる、心が癒されると思ってもらえるような場所にしたいです。チャレンジする人、冒険者の聖地になればと思います。とにかく色んなことにチャレンジして下さい。」
            

以上

絆工房と植村直己冒険館吉谷館長

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